大阪版/編集長レポート「なんでみんなごみを捨てるんだろうね?」ポイ捨て問題を考える<大阪府茨木市>

「なんで、みんなごみを捨てるんだろうね?」
ポイ捨て問題について考える〈茨木市〉

大阪府茨木市北部に位置し、隠れキリシタンの里として有名な千提寺(せんだいじ)。
豊かな自然とのどかな田園風景が残っているこの地域に、ある問題が起こっている。
いや、問題にしている人はごく少数かもしれない。
けれどもそれが4歳の男の子とお母さんと知って驚いた。
早速、中井さん親子を訪ねた。

田んぼや畑の行き帰りにごみを拾う親子
2年前、高速道路ができた影響もあるのだろうか。
周辺道路脇には、車から投げ捨てられたであろうごみであふれている。
近所に住む中井勘太くんとお母さんの優紀さんは、
田んぼや畑の行き帰り、ごみを拾っている。
勘太くんが、道を歩くたびにごみを拾うようになったのは3歳の頃。
手や服を汚しながらも拾い続ける勘太くんに、
「汚いからやめて」の言葉を飲み込み、
「えらいね、ありがとう」の言葉をかける優紀さん。
いつしか一緒に拾うようになったのだという。
「こんなに頻繁に拾っているのに、2人で持ちきれないほどになる
ごみの山を見ては、心が痛くなるんです」。
何度も聞かれる「なんで、みんなごみを捨てるんだろうね?」の問いに
ずっと答えを見つけられないという。
拾っても拾ってもなくならないごみ。いったいどうすればいいのか…。
秋になり草が枯れると、隠れていたごみが一斉に姿を現す。
まちづくりの一環で行われた「まちの魅力を発信するツアー」では、
その惨状を見かねた参加者の一人が自発的にごみを拾うと、
こぞって仲間たちがごみを拾い集めてくれた。
優紀さんは、「このまちの住民として、恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいだった」と語る。

ファストフード店にメールをしてみた
歩き始めると10分ほどでごみ袋がいっぱいになる。
その中身は、コーヒーやビール缶、お弁当容器、ペットボトル、タバコ箱、吸い殻、雑誌…。
「ファストフード店のごみを見てから、勘太は行きたいと言わなくなったんです」。
あまりの多さに『捨てることを止められないなら、その前提で土に還る材質で
つくればどうですか』とメールを送った優紀さん。
だが企業からの返事は「貴重なご意見をありがとうございました。
今後に活かしていきたいと思います」という、形式的なものだった。
「企業も個人もなく、真剣に考える大人が増えれば、人も社会も、
少しずつ変わっていけるかもしれない。私たちは微力だけれど、無力ではないのだから」。

農家に生まれ自然の生き物たちと共生 
中井さん一家は、なにわの伝統野菜・三島独活(みしまうど)の栽培農家。
高速道路の開発以前はたくさんいたホタルも、今は見なくなった。
小さい頃から、両親が大切にしている田畑で多くの生き物たちと共に育ってきた勘太くん。
畑のごみを拾う親の姿を自然にインプットしているのだろう。
「食品廃棄物は鶏のエサや、土に戻す、といった循環のしくみも、
生活の一部として理解しているはずです、循環できない(自然に還らない)ごみは
『良くないもの』と理解しているのでしょう」。
「ポイ捨て」は自分さえよければという人間のエゴや倫理観の問題と思いきや、
優紀さんはこう話してくれた。
「生活・地域・仕事が分断化され、仕事に追われ、生活や地域の優先順位が
下がっていることも要因です。
ポイ捨てという些細な行為が田畑や土に影響し、次世代に及ぶことなど
想像できない人がほとんどではないでしょうか。
私たちの諦めは固定概念がない子どもの『なんで?』から学び立ち返れます。
海外では自然に生かされているという土台教育があり、
それが人への思いやりにも通じます。
子どもたちには、希望を見出して生きていく力をつけてほしいですね」。

未来のためにそれぞれができること
こうしたごみ問題、中井さん親子の行動に対し、関係行政はどう考えるのか。
茨木市に問い合わせると、産業環境部が現地調査をし、建設部によって
道路脇の草刈りが行われた。
キレイにすることで予防するという方法がとられたのは幸い。
だが予算が間に合わず、一部のエリアのみとなったため、引き続き検討される事案となった。
すぐに明確な回答がない、管轄か否かが重要で歯切れが悪いのはいつものこと。
だが管理や環境改善はもちろん、啓発運動までも行っていることはわかった。
しかし4歳の子どもが心を痛めているということに、一人の人間としての言葉が少なかったのは残念。
日頃から官民一体となったまちづくりは必然だろう。
それぞれが子どもたちの未来を想像することで、改善、解決に向け試行錯誤されることを願ってやまない。

ごみ問題をどう考える?
(関係者に話を聞いた)

大阪府都市整備部交通道路室道路環境課
環境整備グループ  竹田豪さん
市町村連携し地域主体でいてマナーアップも目的とした活動をしている。
今回のような問題はごみを拾って処理する大変さをたくさんの人に感じてもらうことが必要。

茨木市産業環境部環境事業課長 九鬼信行さん
ごみを捨てない、環境問題を考えるきっかけとして小学生を対象とした、
ごみ処理施設、ごみ収集車の見学などの環境教育を行うことにより、
子どもたちを通じた保護者への間接的な啓発と、
子どもたちが将来大人になったときの環境に対する意識につながることを願っている。

茨木市建設部建設管理課総務係係長 福岡寛さん
勘太くんがごみ拾いでケガや事故にあったら大変、大人が守らないと。
地元の清掃活動に子連れで参加することで、地域とつながる。
環境学習を兼ね、清掃している姿を見せることで、ごみを捨てないよう、
自分たちの問題だと意識を持ってもらうようにがんばりたい。

NEXCO 西日本関西支社
不法投棄等が頻繁に見られる箇所に看板を設置、敷地内(フェンス内)のごみは巡回して回収。
管理敷地外の市道、府道の事案であっても他人事ではない。
不法投棄問題は日頃から利用者に呼びかけるなど、しっかり管理していきたい。

 

取材を終えて

35度を超える猛暑の中で、優紀さん、勘太くんと一緒にごみ拾いを体験。
帰り道、木の枝を拾い、無邪気に遊びながら歩く姿にほっとしたが、
「楽しかったね」と言われて複雑な気持ちになった。
私たちにはいったい何ができるのだろう?と考えても、簡単に答えは出ない。
だが休憩時、水筒のお茶を飲む勘太くんを見てハッとした。
まずは、ペットボトルのお茶をやめる、そこからかもしれない。
(大阪版編集長・宇賀佐智子)

★全国版にも<MJレポート>として掲載しています

(大阪版VOL.20  2019年10月号)
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