聞いてほしい。
いや、聞いてもらうほどのことじゃないし、こんなしょうもないことを書き記すのも恥ずかしいんやけど、
でも、なんか嬉しくって。やっぱり聞いてほしい。
私がここまで生きてきた証にもなるくらい、嬉しいことがあったの。
主人と知り合ったのは18歳のとき。
ある日、手作りのお弁当を持って、とある島へ遊びに行くことになった。
生まれて初めてのお弁当作り。
料理なんてしたこともなかったけれど、それはもう張り切った。
そして、冷凍たこ焼きをチンして詰めた。
昼になり、いざ実食!
お弁当箱を開けたときの彼の顔を、今でも忘れられない。
目を見開いて驚いたあと、みるみる落胆していく、その顔。
人間って、あんなにがっかりした顔ができるんやね。
そして、静かに言った。
「作れないなら、作れないって言って」
島にはほかに店もない。
仕方なく二人で冷えきったたこ焼きを食べた。
無味だった。
それからしばらくして、リベンジの機会がやってきた。
今度は家でご飯を作ることになったのだ。
ところが、鍋の蓋がない。
そこで新聞紙を載せてみた。
燃えた。
ばり燃えた。
慌てて火を消し、気を取り直して、今度はまな板を蓋代わりにしてみた。
ぐにゃん。
そして、人間が決して嗅いではいけない臭いがした。
……そんな女と結婚したんだから、主人も相当なチャレンジャーだと思う。
あれから30年。
料理への苦手意識は、今でもしっかりある。
それでも結婚してから毎日、ご飯を作ってきた。新婚の頃なんて、夕飯に2、3品作るのに夕方4時から作り始めて、食卓に並ぶのは夜8時だった。いったい、あの4時間、何をしていたんだろう。
それが、気づけば、そこらにあるもので、パパパッと料理ができるようになった。
そして今日。
レンコンとエビ入り鶏肉団子のお味噌汁に、しゃぶしゃぶ。それから、リクエストされていたエビマヨ。
いつものように、パパパッと20分ほどで作った。
すると子どもたちが、
「ママ!! えっ、これ今作ったと!?」
「ばりうまい!」
「えっ、早業すぎん!?」
と、目を丸くしている。
その瞬間、30年前の、あの弁当箱を開けたときの顔が浮かんだ。
ああ、私、こんなこと言われるようになったんだ。
「ママすごい!」
子どもたちからの羨望の眼差し。
その横で、パパがニヤニヤしている。
そりゃそうだ。
冷凍たこ焼き事件も、新聞紙炎上事件も、まな板溶解事件も、全部知っている男だ。
思わず昔話を披露しそうになったけれど、ぐっとこらえた。
今日は、カッコいい母でいさせてもらおう。
おーーっほっほっほ!
あー、気持ちいいわー!


































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