横横浜市には今、さまざまな事情で家族と暮らせない子どもが約700人います。
そんな子どもたちを温かく迎え入れ、地域全体で育む社会を目指して活動するパング希江さん。
ご自身も里親・ファミリーホーム養育者としてこれまでに32人もの子どもたちを育ててきました。
「里子育て」のリアルな日常や楽しさ、里親制度のこれからについて伺いました。

「人と違うことがしたい」
留学から里親という
新たなチャレンジへ
4人きょうだいの長女として育ち、昔から「人と違うことがしたかった」私。 友人のアメリカ留学を知り、高1で「イギリスに留学しよう!」と決意。全部自分で調べ、申し込みまで済ませてから親に「お金を貸してほしい」と頼みました。
イギリスで高校卒業後、カレッジへ進学。学費や生活費を稼ぐバイトに明け暮れる中、当時レストランで働いていた香港系英国人の夫と出会いました。結婚し、長男を妊娠中に日本へ帰国。夫は大使館の調理師として働き、私は22歳で長男、25歳で次男を出産しました。
若くして子育てが一段落した時、今後の人生について「もう1人産むか、フルタイムで働くか」と考え、ふと「里親」という選択肢が浮かびました。
イギリスでの教育実習中、血縁のない子どもを自然体で育てる夫婦を見ていた影響かもしれません。「普通に3人目を産むのではなく、里親というチャレンジをしてみたい」。留学を決意した時と同じような好奇心が、私の背中を押しました。
思いがけずやって来た
妹たち、そして
輝かしい新米里親時代
里親になるための実習や研修、家族の個別面談が進む中、「年齢も性別も問わない」と言う私に対し、実は夫と息子たちは「女の子がいい」と希望していたことを後で知りました。
ある日「女の子がいます」と連絡を受け、喜んだのも束の間、「5歳と2歳の姉妹」と聞いてびっくり。でも息子たちは「それぞれに一人ずつ妹をありがとう!」と大喜びでした。半年後には小学6年生と4年生の兄弟もやって来ました。
新米里親としての戸惑いや失敗も、若さと勢いで乗り切れたのでしょう。振り返ってもあの頃が人生で一番充実し、輝いていた時間でした。
32人の子どもたちと
刻んできた歴史、
家族の支えがあってこそ
2010年に「ファミリーホーム」を開所して以来、出入りはありますが、常時6人、32人の子どもたちと生活してきました。実子2人が独立してからもわが家はずっと8人家族。
18歳で児童相談所との関係が切れても家を出る子のほうが少なく、大学へも家から通い、就職して出ていく子がほとんどです。現在は小学生、中学生、高校生が2人ずついます。
続けられたのは家族の理解と協力があってこそ。夫は大らかで細かいことには口を出さず、常に私のサポート役。息子たちは同居中、「どうやってこのチームをまとめていこうか」と一緒に考えてくれました。夫から
「いつまでやるの?」と聞かれたことはありますが、「やめたい」と思ったことは一度もありません。息子たちにも、やめる選択肢はなかったようです。
毎日がテトリス⁉
トラブルも楽しむ
里子育ての極意
乳幼児の里子はマッチングしやすいこともあり、うちに来る子はもう少し大きな子どもたちです。子どもたちはそれぞれに虐待や障害、発達の課題など何かしらの事情を抱えています。
それでも里親を続ける理由は、純粋に楽しいから。「おねしょをしなくなった」「自分で鼻をかめるようになった」など一つひとつが「小さな幸せ」であり、毎日はその積み重ねです。
たとえば今晩、6人が放課後キッズや部活動、アルバイトから無事に帰り、お風呂やごはんの順番でもめることもなく一日が終われたら…ゲームの「テトリス」で各パーツがピタッとハマり、クリアした時のような達成感や爽快感があります。逆に問題が起きたら起きたで、「よっしゃー、どう攻略しようか」とテンションが上がります。
里子育てに失敗はありません。うまくいかないのは自分のせいではなく、「作戦が良くなかっただけ」と思えます。日々の生活の中で問題が起きた時には余計にやる気が出てきます。
伴走者として、
地域全体で子どもを育む
社会を目指して
現在は、特定非営利活動法人さくらみらい横浜で、横浜市から委託を受けた「里親フォスタリング機関」の職員としても活動しています。
重要な役割の一つは里親になるまでのサポートです。子どもが新しい家庭で安心して暮らし、里親さんも自信を持って子育てできるよう、出会いからその後の日々の生活までずっと寄り添い、伴走し続ける仕事です。
課題は、この制度や子どもたちの現状がまだ広く知られていないこと。里親には「養子縁組里親」や「養育里親」のほか、横浜市には週末や長期休みだけ施設の子どもを短期間預かる「フレンドホーム」という事業もあります。「まずは週末だけ」という関わり方から始めることもできるのです。
地域全体で子どもたちを育む社会を目指し、みんなが「自分にも何かできるかも」と関心を持っていただけるよう、今後は情報発信にも力を入れていきたいと思っています。
「もう一度子育てをやれたら」と言うお母さんは多いけれど、私は54歳の今も「子育て中」。子どもたちや、仕事を通して出会うたくさんのお母さんたちから、日々感動と学びをもらっています。
夫とは「天職だね」と話していますが、本当に子どもたちのおかげで、スリリングで充実した、幸せな毎日を送っています。里親の現状を知り、ここまできてしまったからにはやめるわけにもいきません。
夢は、制度の認知度を上げ、「里親が珍しくない(当たり前の)社会」にすること。これを読み、里親に興味を持ってくださる方がいればうれしいです。
★11月8日(日)、市役所アトリウムで開催する「里親制度啓発イベント」に、
お母さん大学も出店参加させていただきます。
イベントの詳細は公式サイト「さくらみらい横浜」ほかSNSで随時発信されます。
里親フォスタリング事業に関わり、
自ら6人の子どもを育てる
パング希江さんの物語は、
子どもたちの人生に、夢を描く軌跡
●特定非営利活動法人さくらみらい横浜
https://sakuramirai-yokohama.org/
●横浜市 里親制度について
https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/oyakokenko/satooya/
お母さん業界新聞 8月号


































コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。