お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

母という旅の途中で

30年前につくっていた、お母さん業界新聞の前身である『トランタン新聞』は、最終頁が読者アンケートになっていた。それを切り取って折ると、封書になるというもの。当時はその感想が届くのがうれしく、読者との唯一のつながりでもあった。

IT社会の今、メッセージは瞬時に届くのに、新聞の感想が届くのはわずか。喜んでもらえているのか、つまらないのかと不安にもなる。だがきっと読んでくれているはずと信じながら、毎号、心新たにペンを持つ。

そんな中、うれしい感想が届いた。先様はお母さんではなく男性。しかも文面からすると、かなりの年長者である。

ーー「12月号、読ませていただきました。このたび貴紙を初めて知りました。お母さん目線に合わせた新聞は大変面白いですね。昨日、市立図書館で、たまたま御紙を見つけました。特集の『母たちが旅する日本』。母の字がつく地名、ずいぶん探されましたね! 子安神社は横浜にもありませんか? トヨタの挙母町も、懐かしい町名ですね。岐阜県の加子母村、白川村の御母衣(ダム)の記載はありますが、祖母谷は載っていないようですね。私は70年以上前に、白馬岳から1人で黒部川源流部の、このババダニ(温泉)まで下りました。途中、猿の群れに囲まれて、恐ろしかった思い出があります。余計なことを書いてしまいました。大昔の思い出です」(本文まま)ーー

祖母谷(ババダニ)という地名に感動。恐れ多くも、母の母ではないか。こんな地名があるなど知らなかったし、祖母(ババ)には思わずにんまり。

由来を調べると、「祖母谷はその昔、夫の女遊びに嫉妬した妻が、信州に逃げる夫を追いかけ途中の谷で息絶えてしまいその怨念が熱湯となって噴き出したことから名づけられた」とあった。祖母谷温泉の近くには熱湯が湧き出る「祖母谷地獄」があると知り、母の色が一気に地獄色になり、女の怨念かと、さらにワクワク。

近くには「猿飛峡」という場所があって、黒部川本流で最も川幅が狭く、野生の猿がらくらくと飛び越えたことが名前の由来とある。御人が怖い思いをした場だろう。今では特別天然記念物・特別名勝になっている。

一通の感想が、まるで旅の途中の出会いのようで、うれしかった。

トロッコ電車に乗って祖母谷温泉に行ってみたい。若い母たちとではなく、婆たちに限るほうがいい。

祖母谷(黒部市宇奈月町)は、日本郵便が指定する交通困難地(郵便物を配達できない地区)というから、秘境中の秘境。おまけに雪深く、営業は5月から11月までという。
寒はこれからというのに、もう春が待ち遠しい。
(藤本裕子)

お母さん業界新聞2026年1月号

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