「世の人々の楽しみと幸福(しあわせ)の為に」——。世界のタイヤメーカー「ブリヂストン」の創業者・石橋正二郎氏が1956年に故郷・久留米市へ寄贈した石橋文化センター。
その敷地内で親しまれてきた「石橋美術館」が、市運営の「久留米市美術館」として再スタートを切って今年で10周年(文化センターは開園70周年)を迎えます。10月
24日から始まる記念展「コレクションing—コレクションをともに見る・語る」は、親子で会話を楽しみながら鑑賞できる仕掛けが満載。美術館を「もっと身近に感じてほしい」。学芸員の佐々木奈美子さんに、その想いを伺ってきました。 (MJ池田彩)
ゼロから育んだ市民一人ひとりの「宝物」
10年前、石橋美術館から久留米市美術館へ生まれ変わるにあたり、久留米市のコレクションは実質ゼロからの出発でした。というのも、石橋美術館で展示公開されていた作品は、石橋財団の所有するものだったからです。
市役所にあった作品など約30点を集めることから始まり、地道な研究と収集を重ねて、現在は約320点に。
収集第1号となった髙島野十郎の《蠟燭》(寄贈)や、最初に購入した坂本繁二郎の《放水路の雲》をはじめ、10年間の歩みを経て、今回初めて自館のコレクションのみで展覧会を開催します。
ここにはゴッホの『ひまわり』のような世界的に有名な名画はありません。しかし、久留米や筑後には、日本の油絵史を支えた素晴らしい画家たちがたくさんいます。
「この絵はどういう縁でここに来たんだろう?」と想いを馳せたり、まだ知られていない地元作家を応援したり。まるで〝推し活〟のように、久留米の美術史とつながる作品たちを「市民一人ひとりの宝物」として楽しんでもらえたら本望です。
会話を楽しむ〝館内推し活〟へようこそ
「美術館は静かに見なければいけない場所」と思うお母さんの気持ちに少しでも寄り添いたい——。
そんな思いから、今回は、親子一緒に展示品約100点の中から好きな絵を選ぶ「人気投票」企画を用意しました。
職員10人でまずはやってみたところ、それぞれの「好き」が見えてとても面白かった。
入口で投票券を受け取ったら、「どれが一番好き?」「家に飾るならどれ?」と親子で会話しながら鑑賞してみてください。順位付けではなく、自分がピンとくる「推し作品」に出会うきっかけにしてほしいからです。
館内には音楽が流れ、作品を介して人と人が自然に語り合える空間を目指します。対話の中で、わが子の意外な視点や柔軟な感性にハッとさせられることもあるはずです。
お母さんがまずは楽しんで!
子どもは四方八方に興味が向き、上も下も右も左も見たいもの。順路通りに静かに歩くなんて不可能です。
小さな子が絵画を心から理解できるかはわかりません。それでも親子で来てほしいのは、「大人が夢中で美術を楽しむ姿」を子どもに見せてほしいからです。
ジャズを聴く大人を「かっこいい」と感じるように、お母さんが真剣に絵と向き合う姿を見るだけで、子どもにとってもかけがえのない時間になります。
途中でぐずったり「帰る」と言われても大丈夫。一回外へ出て、庭園でお散歩をして落ち着いたらまた入ればいいのです。「優等生の鑑賞」を目指さず、まずは、お母さん自身が楽しんでください。
世の人々の楽しみとの為に
四季折々の花が咲く庭園、白鳥や鯉が泳ぐ池、図書館や音楽ホール。戦後、生きるために楽しみが必要だとつくられた石橋文化センターには、いつ訪れても穏やかな時間が流れています。
イライラしている人がいないこの場所を、自分の庭のように使う人もいれば、人生の節目に訪れる人もいます。
石橋正二郎氏の理念「世の人々の楽しみと幸福の為に」は、10年経った今もスタッフの中にしっかりと引き継がれています。
今日訪れたお子さんが大人になった時、また自分の子どもを連れて帰ってこられるように。私たちはいつでも皆様を温かく迎える、人生の「心の居場所」であり続けたいと思っています。


●久留米市美術館
福岡県久留米市野中町1015 TEL0942-39-1131
https://www.ishibashi-bunka.jp/kcam/
「はじめての美術館プロジェクト」始動!
「いろんな親子に美術館を楽しんでもらいたい」と、新しいプロジェクトが始まりました。
年間パスポートを購入し、日頃から美術館を楽しんでいる、お母さん記者の福島早紀さん。一方、「庭園の鯉のエサやりには行くけれど、子どもが騒いだら困るから館内に入るのはハードルが高すぎる…」と、ドキドキの福成秀美さん。他、5名のお母さん記者がそれぞれの視点で久留米市美術館を訪問!
親子で賑やかに楽しむ人、たまにはお母さん一人で静かに作品と向き合う人、そして気になる子どものリアルな反応はいかに⁉
感じたことや心に残ったエピソードは、「お母さん大学WEB」で順次発信していきます。
5人5様の美術館の楽しみ方を、お楽しみに!
お母さん業界新聞10月号 MJレポート



































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