お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

目指せ!心のバリアフリー(静岡版Vol.25まちレポ)

目指せ!心のバリアフリー

重度障がいを持つ子どもとその親の会「しまだリアンの会」代表の坂田美智子さんは、
肢体不自由で特別支援学校に通う長女・茜さんのお母さん。
主な活動は、重度障が い者の存在を知ってもらい、
理解を求めることを目的とした小中高校での出前授業。
確かな手応えに、未来を感じているという。
(編集長・杉本真美)


島田市肢体不自由児(者)親の会
リアンの会代表 坂田美智子さん

Q1.毎日の生活について教えてください。

長男は4月から県外の大学へ。
長女・茜は高2で、 特別支援学校の肢体不自由クラス。
小5の次女は生 意気ざかりですがちょっぴり甘えん坊。
と、 三者三様 で面白いです。

私の朝は新聞配達のバイトからスタート。
次女を見 送った後は茜を特別支援学校へ。
日中は買い物やリア ンの会の活動でいろいろと動き回り、
夕方家族が帰宅 して夕食が終わると今度は自宅でやっている塾の先生に早変わり。
一日がバタバタと過ぎ去っていきます。
家族の間では、普段から皆で助け合い「ありがとう」 と言葉にするようにしています。
感謝を忘れず、当たり前にならないように気をつけていることが、
日々の子育て・家族の雰囲気を良くするコツだと思います。

Q2.出前授業とはどのようなものですか。

2011年に、重度障がい児者リアンの会を設立。
みんなで名前を検討するうち、
フランス語で「絆」を意味する「リアン」という言葉に辿り着きました。
同じ境遇を抱えた母の絆はとても強いと思います。

子どもたちが大人になるまで地域に根ざして生きていけるようにと、
啓発活動として親子で市内の小中高 校へ出前授業に出かけています。
子どもたちは最初こそはじめて目にする車椅子の子どもに戸惑いを見せますが、
車椅子を押したり自己紹介の○×クイズをやったりするうちに、
みるみる距離が近づいていきます。
「障がいがあっても、三代目J Soul Brothers が好き だとか、
マリオカートが上手いとか、学校で給食を食べるとか、
うちらと同じじゃん⁉」
と思うように。
わずかな時間でも、直にふれあうことでどんどん変 わっていく子どもたちに未来を感じ、
こちらもたくさ んの気づきと学びをいただいています。


出前授業の様子

Q3.活動中のエピソードはありますか。

茜が3歳の頃、私は気持ちがすごく落ち込んで毎日泣いて暮らしていました。
進歩があまり見られない状況の中でほかの子と比べたり、
外に出るのもいやになって悪循環に。
そんな私の様子を見ていた先輩お母さんが、私の心のあり様についてこう言ってくれました。

「人の視線 や心ない言葉の数々を、お豆腐のようにすべて吸収して
ぐちゃぐちゃになってしまうのは不幸だよね。
でもダイヤモンドのように、どんなものも跳ね返す強さと
キラキラとした輝きがあれば幸せになれるよ」
と。
ずっと泣いていて状況が良くなるのであれば泣いて いればいいけれど、
そうはならないのだから「もう泣 くのはやめよう」と決めました。
幸、不幸は心一つ。
すべて自分の心の持ち様であると気づかされました。

出前授業で子どもたちにこの話をしたら、感想文に
「私はお豆腐の心だったけど、これからはダイヤモン ドの心になろうと思った」
と書いてくれた子が何人か いました。
私自身が、少しでも子どもたちの「生きて いく力」になれたらと
あたたかい気持ちになりました。

Q4.知ってもらうための活動とは。

直面している課題は、障がい児者をケアしてくれる 看護師さん不足。
これは看護学校や市議会議員、行政など、関係者を巻き込んで進めていきます。
茜は胃ろうなどはついていませんが、いずれそうなるでしょう。
すでに医療的ケアの必要な子もたくさ んいます。
この子たちが高校を卒業してから通うデイ サービスに、看護師さんが絶対必要なのです。

それから、障がいを持つ子どものことをもっと地域に知ってもらうために、
毎年、障がい者福祉連絡会が 「てけてけ隊」という
駅前商店街をめぐるイベントを開催しています。
イベントには店主さんはもちろん、 行政や民生委員さんもサポートしてくださり、
とても あたたかい雰囲気で開催できています。
こういうとこ ろから、本当の意味の「心のバリアフリー」を目指し ていきたいです。


今年の「てけてけ隊」のイベント

Q5.子育て中のお母さんにメッセージを。

自分の子どもがほかの子より遅れていたり、何だか 違うなと思ったら、
絶対に一人で悩まないでください ね。
それは障がいのあるなしにかかわらず同じだと思います。
共感してくれる人も、力になりたいと思ってくれる人もいます。
それに、今の苦しみはずっとは続きません。
茜は赤 ちゃんのとき「一生笑わないでしょう」と医師に言われ、
もう死んでしまおうかと思いました。
けれども、 2歳で目が見え、4歳で笑うようになりました。
「あー、 死ななくてよかったー!」
そう言って、看護師さんと 大笑いしました。
今は茜と二人三脚で、周りの方々の力を最大限に活用させていただき
楽しく進んでいます。
子育てをする親同士、感じ合い学び合えたら、
よりよい地域・社会 になると信じていますし、
そうなったらうれしいなと思います。

* * 取材を終えて * *

障がいのあるなしにかかわらず、わが子を想う「お母さん」の気持ちは同じ。
だが一歩間違えば、私たちは障がい者を弱者ととらえ、自分は支援する側の人間であると
勘違いしてしまうこともあるだろう。
取材でもわかったのは、私たちは、障がい児と障がい児のお母さんたちに学ぶことだらけであるということ。
とはいえ社会の認知はまだまだ低く、彼らが多くの問題を抱えていることも事実。
多様性がうた われる昨今。彼らにやさしい地域・社会づくりとは、
知って、受け入れ、ともに歩んでいくこと。
まずは 繋がることから始めたい。
(杉本真美)

1件のコメント

いい記事をありがとうございました。
坂田さんの家族はみんなが学びあっていますね。
それを地域に知ってもらうために活動をされているのが更に学びを広げる力になります。
障碍者本人や家族の歩みはこれまで本当に亀の歩みと言われるくらいの進み方だったかもしれませんが
IT社会の光と影が言われていますけれど、光の方にみんなで進めていきたいですね。

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ABOUT US
杉本真美
中2娘、小6息子を持つ、フツーのお母さんです。 <お母さん大学>に入学したのは、息子を出産した頃。 しっかり子育てしなきゃ!の肩肘張った子育てを、180度変えてくれたのが<お母さん業界新聞>・<お母さん大学>でした。 2011年に静岡県に引っ越し、今は静岡版編集長をやらせて頂いています。 13紙の地域版編集長とともに、静岡県内にお母さん業界新聞とお母さんのココロを広めていきたいです。