お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

台所に立ちたくなる一冊

特集(本紙4・5頁)で紹介した本『母の味、だいたい伝授』(新潮社)。面白すぎてソコでは足りず、ココ百万母力に、はみ出し失礼!

美味しそうな写真などただの一枚もないのに、読んだそばから料理がしたくなる。こんな料理エッセイは滅多にない。読後に、著者おすすめの「母サラダ」をつくる。

ーー中鉢の内側に、母はまず、ニンニクのかけらを擦り込む。そこへ、そのときどきにある野菜を切って入れる。その上から酢、サラダ油をタラタラタラッと適当に垂らし、最後に塩胡椒で味を調え、ほどよく混ぜるだけーー。

いたってシンプルだが、もう市販のドレッシングはいらない。ニンニクを擦り込むのがポイントか。つくってみたら普通のサラダだった。が、阿川さんは、その母サラダがたまらなく美味しかったという。そう。何の変哲もない、けど美味しい。これこそが、母の味なのだろう。

たくさんのレシピが登場するが、まるで、阿川さんちにお邪魔して、台所でおしゃべりしながら適当に料理をつくっている阿川さんを見ているような…、そんな不思議な感覚。

『母の味、だいたい伝授』という、タイトルの意味が深い。食いしん坊で厳格なお父さんは、とにかく母と娘が、自分のために美味しい料理をつくっていればご機嫌だったと。

おかげで著者は、母の料理をだいたい伝授。有名人やお嬢様にありがちな、料理もしない女性だったら、今の阿川佐和子はない(失礼)。

あまりに面白すぎて妄想癖が出てしまい…、本を読み終えるのも待てずに企む。

①『母の味、だいたい伝授』のレシピを再現した料理本をつくる。

②阿川佐和子の「新3分料理クッキング」。

③阿川家の台所周辺を舞台に一章ごとのドラマをつくる。もちろん女優はいらない。適当に料理するという技(演技)は、仲良しの女優、檀ふみさんにもできないだろう。

④「阿川佐和子が行く、世界の美食旅めぐり」。今は亡き両親との食エピソードを、お料理をいただきながら紹介…と、妄想が止まらない。

著者の仕事柄、各界著名人が折々に登場する。東海林さだお、芦田淳、平野レミ、小泉武夫、伊集院静…。錚々たるメンバーたちとの食エピソードがまた、たまらなく面白い。

「食べることは生きること」というが、著者の天晴れな人生感に惹かれ、本棚から100万部超えのベストセラー『聞く力』(文藝春秋)を、引っ張り出してきた。

https://books.bunshun.jp/sp/kiku-chikara生前、著者のお母様がレシピを書き留めていた「母の料理ノート」が見つからないと書いてあったが、それ故、お母様が、この本を(娘に)書かせたに違いない。

さて今日は、著者がお母様によくリクエストしていたという「レモンライス」をつくろう。鶏料理だがレモンライス…と、心が騒ぐ。興味がある方はアマゾンでポチ。
(藤本裕子)