東大阪で、イベント「えほん箱パーティー」を行った。前日、スタッフ7人で大阪入り。設営を終えて向かったのはホテルではなく、スタッフ青柳が用意した一軒家(民泊)。目の前に銭湯もあり、修学旅行気分だ。 お風呂上りには皆で近くのお好み焼き屋へ。ガラガラと戸を開けると、おばあちゃんが一人。ここからがドラマの始まりだ。
「とりあえずビール!」と言ってみるも、どうやら店主は耳が遠い様子。スタッフ松山が立ち上がり、耳元で「ビール!」と叫ぶと、満面の笑みでビールサーバーを指さした。
「は〜い、松山やりま〜す!」と、笑顔でビールを注ぐ。そんな彼女に「べっぴんさんやねぇ」と店主。動くたびに褒めるものだから、だんだんと松山がべっぴんさんに見えてきた。
とはいえお腹ペコペコな7人。「このおばあちゃん一人で、全員の胃袋を満たせるのか?」と不安になってきた。
まずはおでんを注文。だが鍋の中は空っぽ。諦めかけた我々に「美味しいで」と言いながら、手際よく冷凍庫から種を取り出して鍋に入れ「10分待ってや」と一言。 続いて豚玉。手慣れた手つきでガスをつけ、仕込み始めた。しかし鉄板から煙が上がっても、一向にお好み焼きは出てこない。火加減を調整しようとしたスタッフ矢吹に「ダメダメ! 火、消したらあかんで!」と、すかさずチェックが入った。
その勢いに、思わず松山が「お母さん、おいくつですか?」と耳元で叫ぶと、返ってきたのは「93歳」という驚きの数字。なんと65年も、ここに立ち続けているのだそう。 どおりで! ようやく出てきたおでんも豚玉も、なかなかいいお味。長年のキャリアに、腕は確か、と胸をなでおろす。 それにしても、御年93歳で一人でお店を切り盛りしているなんて
神の領域だ。だがお母さん、「昨年一人息子を亡くしたショックで、耳が聞こえなくなった」と静かに話してくれた。
いろいろ注文したけれど、お会計はちゃんと計算できるのか?との心配は無用。“べっぴんさん〟の松山が、ちゃっかり「メモ係」を命じられていた。さすが大阪商人。
ふと隣を見ると、滅多にお酒を飲まない最年長スタッフの金子も美味しそうにビールを飲んでいた。さては「私もまだまだやれる!」と、勇気をもらったか。
帰り際、名刺を渡すと「社長さんなんや、偉い人やねぇ」と褒められた。だが欲を言えば、私も「べっぴんさんやねぇ」と言われたかった。
最後は店先で、「また来てな」と、笑顔で見送られた。渡されたメモには、きれいな文字でケータイ番号と「お好み焼き 太田君子」とあった。さすが、ぬかりがない。
お母さんはスゴイ! 君子さん、勇気をありがとう。
(藤本裕子)
※写真は「ハハコミ」参照
お母さん業界新聞 7月号

































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