佐賀県鳥栖市飯田町。田んぼと畑の中の住宅街。
天満宮と公民館を兼ねた施設のすぐ近くにある、広い庭の一軒家の離れが『いろり』の拠点です。
近所のおばあちゃんに道を尋ねていたら、代表の渡辺さんが小走りでやってきました。
中に入ってみると、一階がキッチンと続いた大広間。
二階は食料や日用品が整理整頓されて並んでいました。前の住人さんが置いていった本棚がある、隠れ家のような部屋もあり、子ども達も喜びそうな場所だなと感じました。
淹れてくれたコーヒーを頂きながら、お母さん大学生の福永・内山がお話を伺いました。
「居場所をやるのだけど、どんな事ができたらいいと思う?」いろりの初代の代表から、質問されたことがあって、それに答えた時は
「まさか自分が代表をやる事になるとは思わなかった」と渡辺さん。
活動が本格的になるタイミングで誘われて運営メンバーに。そして入れ替わりがあり、代表を務めることになったそうです。
月に一度の『いろり』で
月に一度開催する食品パントリーでは、食料を取りに来たご家族に
「軽食食べていかないですか?」と声をかけて、ぜんざいやお雑煮などをふるまっています。
一緒にテーブルを囲み、食べ終わると子ども達は遊び始めます。
お茶を飲みながら、お母さんたちに「ここでどんなことができたらいいなと思う?」とたずねてみると、
「バーベキューができるといいな」
「冬休みとか預かってもらえるといいな」等、ニーズが上がってきたそうです。
これをやろう、と提示するよりも、ニーズに合わせて柔軟に行うクリスマス、お正月、ハロウィーンなどのイベント。行っているうちに老若男女問わず集う場になった『いろり』。
一時期は物資が行き届かなくなる程、参加人数が増えました。
その時はアンケート調査をして、子育てしていて経済的に困っているご家族を中心に来てもらうことにしたそうです。
「もっと開いてほしい」という声が寄せられる一方で、開催日を増やすには、人員の確保や運営体制の充実といった課題もあります。
あるお母さんから、「いろりで出会った人と、後日スーパーでばったり会って話をしたよ」と聞いたことを振り返られます。その言葉から、月に1度の場であっても人と人とのつながりは生まれ、日常へと広がっていくのだと実感されたと笑顔で話してくれました。
SOSを出す方は少ない
一緒に過ごしていると保護者から
「子育て支援について知りたい」
「発達障害の特性への理解や、関わり方が難しい」といった声が聞こえてきます。
話をしていると、「何か困りごとを抱えているのではないかな」と感じることがあるそうです。
しかし、本人からSOSが発せられることは決して多くありません。
相談支援のお仕事をされている渡辺さんは、
「自分たちだけではどうにもならないほど状況が深刻になってから、ようやく出会えたご家族もある」と話されます。その段階になると、本人やご家族にとっても、支援する側にとっても、大きな負担がかかってしまいます。
そこで、保護者一人ひとりと個別に話ができるよう、面談の時間を設ける取り組みを始められました。
にぎやかで楽しい時間も大切ですが、自分の思いや悩みをゆっくり話せる時間もまた大切なのだと感じます。SOSになる前の小さな声に耳を傾けることが、大事なのだなと思いました。
「1人で抱え込まずに、誰かに頼ったり、迷惑をかけてもいい」
このメッセージを社会に伝えていきたいと話されました。
みんな欲していたんだなぁ
事前に頂いた紹介文に、赤ちゃんから小学生、中学生、高校生、大学生、お母さん、お父さん、 地域のボランティアの方、鳥栖市内のボランティア組織の方が一斉に集った初めての食品パントリー、その光景を見たときの驚きと温かい気持ちがこもった
「人が集い、同じ時間を共有することがこんなにも心を満たす人と人とのつながり、コミュニティこそ、いろりの財産」という一文が表現されていました。
詳しく聞いてみると、鳥栖市内のボランティア組織では、団体によって支給時期が違う食品の相談をしたり、家具や電化製品の調達が必要な時に呼びかけたり、といった過去のエピソードから横のつながりが構築されていることを教えてくれました。
ボランティアに初めて参加したある男性は、「こんな世界があったんだ」と驚いた様子でした。今では利用者さん以上に活動日を心待ちにしているそうです。
最近では、食品パントリーの手伝いをしに、ひきこもりがちだった子が保護者と一緒に参加したり、近所の人が休日に草刈りをしてくれたりと、新たな広がりが生まれています。
支援する人、される人ではなく、集う人皆『いろり』の仲間になっている。
確認するように何度か「みんな欲していたんだなと思う」と話される渡辺さん。別れ際、庭の木々を眺めていたら『いろり』時間を私たちにも共有させてほしいという思いが沸き起こります。
月に一回、一緒に時間を過ごすことで、人、事、物がつながっていく。
その様子をたっぷりと聞かせてもらって「月1回だったら始められるかも」と思うことがありました。
見たい世界は、まず自分から。勇気ももらったと感じた取材時間になりました。

































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