お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

オソイホドハヤイ 〜 アジトと、モモと、母時間と 〜

3月19日、みなとみらいに誕生する
お母さん大学の「アジト」を見学に行った。

まだ、ただの古びたビルの一室(めっちゃ失礼、でもほんと笑)でしかない
新拠点の床には「母時間」と書かれた模造紙が広げられ
そこにお母さんたちが、ここでやりたいことを思いつくままに書いていく。

私はと言うと
久しぶりの再会に積もる話と、
まだまだママべったりの息子の相手で
終始バタバタ。
アイデアを考えるどころか、じっとして文字を書くのも一苦労。

そんな中、ふと隣にいらした藤本学長が
モモも良いなと思ってるのよね、児童文学の」と私に一言。
「???」
モモはもちろん知っているけど、何の話…?
藤本さんのお話はいつもながら唐突だ。

「失われた時間の話、を、…子育ての、時間が…この場所で…、そのハハジカン、…を…」

アギャーー!!!

ここで、みなとみらいにゴジラ参上!

ではなく、息子の「マーマー!!みーてー!」の大絶叫により
あえなく会話は途切れる。

ぜんっぜん、話が掴めないまま
短い会話は終了してしまった
(藤本さんゴメンナサイ…)。

***

楽しい1日を終えて、夜、
ふと「モモ」の一言を思い出す。

あの話は結局何だったのだろうか。

『モモ』は小学生の頃から大好きで何度も読んだし
自宅の本棚にもハードカバー版が鎮座している。

しかも実は私、大学で西洋文学を専攻していた。
つまり、件の『モモ』の著者である
ミヒャエル・エンデ作品を原文で読む宿題もあったし
(どれだけ読めてたかはともかく汗)、
遠い記憶ながら『モモ』について扱った講義も聞いたはずだ。

が、このドイツの名作とお母さん大学のアジトに
何の関係が???

ぼんやりと、物語のあらすじや文学的解釈を思い出す。

灰色の男たちが

人々に時間の節約・効率化の術を教え

節約された時間を人々から奪っていく。

人々は楽しむことや余暇を忘れ

ひたすらセカセカと働き続ける。

主人公の少女モモは

灰色の男たちから

人々の奪われた時間を取り戻すー

 

「母時間」というキーワードがそれに結びつくと言うのなら。
ここはひとつ
学生時代に戻り(お母さん大学生だし)
自分なりに考察してみよう。

***

子育ては常に時間との戦いだ。
授乳や夜泣きで眠る時間もままならない乳児期に始まり、
手も目も離せない時期に必死でこなす家事。
園や学校に入れば子供のスケジュールに縛られ、
仕事をしていれば、勤務と育児の時間をいかに振り分けるかに四苦八苦。

1日を28時間にしてあげると言われたら
飛びつくお母さんは山ほどいるだろう。

灰色の男たちなら、こう誘惑してくるかもしれない。

・片道5分のスーパーに子連れだと30分!?もったいない!体感ゼロkgの特製おんぶ紐をプレゼントしましょう。お菓子売り場では眠くなるオプション付きですよ。これで買い物時間を週に7時間は節約できますね。

・同じ絵本を1時間も読み続けているですって!なんということだ。お母さんの声をそっくりそのまま再現できる、最新読み聞かせロボを差し上げますよ。寝かしつけにだって使えます。貯蓄に回せる時間が増えましたね!

 

「時間の貯蓄」はファンタジーだが、
忙しい日々につい、
子供との時間を「こなす」ことだけに必死になってしまった覚えは
私を含め多くのお母さんにあるはずだ。

だけど、子育ての時間って本来
「こなし」「縛られる」だけのものではない。

そこには、気づかないだけで、奪われてはいけない大切なものが隠れている。

モモの友人である掃除夫は、灰色の男たちの登場により、
「タイルを一掃きしては休み、自分の掃除した道とこれから掃除する道を眺める」という仕事のやり方を忘れてしまう。
そして「何をするでもなく、ただモモと一緒にいる」という大好きだったはずの時間を手放してしまう。

「母時間」とはきっと
右手に持った重いエコバッグの中で、生肉と夏の日差しが格闘していることを知りながら、
左手につなぐ我が子が一心にアリの巣を眺める感性に寄り添う時間。

暗唱できるほど読んだ絵本を今日も読み、いつか子供が巣立ったあとに、その絵本のフレーズをふと思い出す時間。

「母時間」がお母さん大学の守りたいものならば
「アジト」という名称にも納得がいく。
あの古ぼけたビルの一室(だから失礼)は、
灰色の男たちからお母さんと母時間を守る場所なのだ!

灰色の男たちとは何のメタファーか。
大学の独文学研究室なら、それは、高度経済成長に伴う効率主義等々の答えになるのだろうが、
ここはお母さん大学。

お母さんから母時間を奪う泥棒は、
「孤育て」による視野の狭窄かもしれないし、
子育て世代が働きにくい世の中かもしれないし、
あるいは、いろんな価値観につい縛られてしまうお母さん自身かもしれない。

そういう時間泥棒たちをやっつけて
お母さんがお母さんに戻れる時間をつくる。
お母さんに子供との時間がいかにかけがえのないものかを伝える。
アジトはそんな役割を担っていくのかもしれない。

物語のクライマックス、
モモを灰色の男たちの元へ案内するカメ「カシオペイヤ」が
「オソイホドハヤイ」と教えてくれる。
作品世界では、ゆっくり歩くほど速く進み、急ぎ足の男たちに追いつける、というファンタジックな設定なのだが
現実の母時間はそうはいかない。

1日はどうしたって24時間だし
アジトにいる間だけ、外の時間を止められるという魔法もない。

じゃあどうやって母時間を守るのか。

泥棒から時間を取り戻してくれたモモは、実はただの少女で
家もお金も家族もない。
ただ一つ他の子と違うのは「人の話を聞く」ことができるという点だ。

だとしたらアジトは
お母さんが子供の声にじっくり耳を傾けられる場所、
そしてお母さんの声を、たくさんのお母さん仲間が聞いてあげられる場所。

焦った時ほどピタリと足を止めて向き合ってみる。
全く動いてないように見える日々でも
実はものすごく進んでいる。

子供と共に歩く母のカメの歩みが
オソイホドハヤイ
ということを
アジトがきっと教えてくれる。

16件のコメント

蘭さん、見事な考察、母時間のコト、アジトのコト、モモが、一つの線につながっていることがよー---く伝わってきましたー。私の本棚にもモモがずーっと特別に飾られています。忘れたくないことだからいつも目にできるようにしようと思いながら、鎮座するだけになっていたモモ。でもこうしてお母さん大学でつながっていったことが本当にうれしくて♪モモは普通の女の子。私たちも普通のお母さん。普通のお母さんだからこそできること、楽しみですねー。私も早く行って、みんなと話をますますしたくなりました♪

池田さんにとっても、モモは特別な本だったんですね♪
何年か前にテレビでも紹介されたという池田さんの、何もできなかった日のことを綴られた記事、
まさに母時間の真髄という気がします。

いつかアジトで直接お会いできることを楽しみにしております^ ^

ちゃんと聞けなかったからこそ、ここまで深く考えられたんだろうなって思うと、息子くんグッジョブ!(笑)
蘭さんの文章を読みながら、なんだろうな泣けてきました。
たくさんの時間が奪われているのかもしれないなって。その時間はすごくすごく尊いものなんだなって。
素敵な考察をありがとうございます!

たしかに、息子のせいで(おかげで?)
完全に「続きはまた来週〜!」状態だったので
ちゃんと考えようという気になれたのかもしれません笑

ついつい時間に追われ、忘れちゃうこと、誰にでもありますよね。
ちょっとずつでも、自分が大切にしたいものを思い出せる時間がとれると良いのかなと思います。

昨日は久々に蘭ちゃんのスマイルに会えて嬉しかったよ♡
そして、モモ。うちの夫も素敵なハードカバーで持っていたので借りてるんだけど
なかなか読みきらず(^_^;)
蘭ちゃんの考察を読んで状況が浮かびました。
なぜ借りたかというと藤本さんに
「モモって、吉村さんみたい。読んでみて」と紹介されたからなのだけど…
こりゃ大変。すごく大切な役目をもった子だ。
目覚めなきゃ!吉村モモ!

こちらこそ、優さんにもあおいちゃんにも
お会いできて嬉しかったです!
(全然ゆっくりお話しできずすいません泣)

まあまあ長いですし、大人が読むには体力いりますよね笑

優さんとモモ、なんだか分かる気がします。
じっくり優しく話を聞いてくださりそう♪

蘭さん、昨日はお会いできて嬉しかったです!勝手に知っている気でいたけど、はじめましてだったのですね!

モモ、読んだことがなかったのですが、とても読んでみたくなりました。
そして、最近は仕事も家事も育児も、「こなす」になっていた自分がいたと思います。
幼少期の子どもの1年は大人の10年くらいの速度だと聞いたことがあります。
子どものペースに合わせて、ゆっくり流れる時間も一緒に楽しみたい。改めてそう思いました。ありがとうございます。

こちらこそ、お会いできて嬉しかったです!
記事はもちろんのこと、手話歌動画等でもご一緒したせいか
私もほんとに初めましての気がしなくて^ ^

LINEグループでも少し書きましたが
コラムでの菅野さんのメッセージが
考察のヒントになりました。
こちらこそありがとうございます♪

なんかうまく言葉が見つからないけど、
とにかく、ものすごく納得!
私が、ちまたに氾濫する「育児ハック」に違和感を覚えていたのは、それだったんだ!と腑に落ちました!
いかに効率よく、いかに便利に・・・
育児はそういうものではない。
ああ、蘭さんありがとう。
アジト、私も早く行きたい!

育児ハック、私自身はそれに助けられることも多々あるので
それぞれ使えるものは使えば良いのかなと思いますが、
効率よくやればやるほど偉いとか、
そういうハウツーを知らないママが劣ってるみたいな風潮にならないようにしてほしいなと感じます。

非効率でもその親子にとっては必要不可欠な手間や時間があることを
お互い理解、尊重していけたら良いな、と。

私も、モモ、愛読書!大切にしている本です。

それにしても、杉本さんの灰色の男の誘惑に「めっちゃいいやん」と思ってしまった!ガ~ン!ヤバい!灰色の男につれてかれるー!!!

いやぁ、この発信、ものすごく面白い!モモの子育てバージョン。なんか、お芝居にしたら、後世ずっと演じ続けられる名作になるばい。

そうだったんですね♪

灰色の男の誘惑、私も妄想して書きながら「まあまあええ商品やん」って思ってしまいました笑

でも妄想商品であれ、実在の育児グッズやサポートサービスであれ、
使うこと自体は全然ウェルカムと私は思ってます(むしろどんどん色々開発してほしい!)
そういうの使う方が、心に余裕が出て「良い母時間」を過ごせる人も多いでしょうし♪

そして、お褒めの言葉ありがとうございます。
脚本化を中村さんの方でぜひお願いします!笑

昨日はありがとうございました!
会えてめちゃくちゃ嬉しかったーーー!!!!

小柄な蘭ちゃんのパワーと引き出しがいーっぱいあって、すごい!すごい!と記事を読みました。
恥ずかしながら、モモは読もうとして途中で断念。でも蘭ちゃんの考察の方がエピソードが入ってくる。笑
また会えたらいいな!いや、会おうね!
人生まだまだこれから〜!!

こちらこそありがとうございました!
ほんとに、お会いできて嬉しかったーー♪
脇門さんとのコンビに元気とハッピーをいっぱい分けてもらいました!

モモ、長いですよねーー笑
私も今再読したら何ヶ月かかることやら。

会いましょう!ぜひアブダビに!笑

蘭さんの笑顔に会えてうれしかった〜〜!
そうちゃんも、歩いている!わお〜〜!
投稿で見ていても、実際に会うとなると、そのサイズ感とか、ものすごく感動しますね。

そして蘭さんの考察。
面白すぎます、もっと読みたい!
うちの娘にも見せたい!考察大好き!
モモは私も読んだのですが、なんか平仮名が多くて逆に頭の中がもにょもにょした記憶があります。
もう一回読むことにしました。
どんな場所になったとしても、お母さん大学の場所なら、お母さん大学生がいるなら、
きっと、未来は明るい気がしています。

こちらこそ、お会いできて良かったです!
ライブで息子の騒がしさばかりお伝えしたのではないかと…汗

考察も読んでくださりありがとうございます♪
記憶適当なまま書いてないかと、やや不安になってきたので、私もゆっくり再読しようかと思います笑

素敵な場所になっていく姿、近くで直接見るのは少し先になりそうですが
楽しみにしております!

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ABOUT US
杉本 蘭
2019年、30歳で息子を出産。 京都出身。横浜→東京暮らしを経て、 現在は夫の駐在に帯同しUAEにて子育てライフ満喫中です。