お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

追悼企画 ありがとう、林明子さん。

7月1日、絵本作家の林明子さんが、肺炎のため81歳で亡くなりました。子どもが見せるわずかな心の揺らぎやきらめき、その体温や息遣いまでが感じられるほど、いきいきとした姿で子どもたちを描き出した作品は、世代を超えて多くの人に愛されています。

子どもをよろこばせたくて、
大人は「たかい、たかい」をやってあげます。
かわいい笑い声をたてながら、「もっと!」と言われると、
大人は腕が痛いのもつい忘れて、またもちあげてしまいます。
絵本をつくりながら、私は
「たかい、たかい」をするような楽しみを感じていました。
脂汗を流し、あの手、この手を試しながらつくる仕事は、
「たかい、たかい」の腕の痛みどころではありません。
でも、できあがったばかりの本を、子どもを膝にのせて、
おもむろにひらき、読み、おしまいに、
「もっと!」と言われたときは、本当に幸せな気持ちになります。
(『子どもを描く 林明子の世界』福音館書店より抜粋)

リアリティと温かみ

『はじめてのおつかい』が発刊されて50周年を迎える今年、これまでの創作活動の集大成として『子どもを描く 林明子の世界』が4月に出版されたばかりでした。訃報を聞いてすぐさま手に取った一冊。ページをめくるとそこには、リアリティと温かみにあふれた「子どもたち」、そしてまた、作品が生まれた背景やエピソード、林さんご自身の思いなどが紹介されています。

どの子もどのシーンも忘れ難く、改めて絵本をめくってみたくなります。

あの頃の記憶

林さんの絵本には、特別な思い出があります。息子が幼い頃、よく読んだのが『おふろだいすき』でした。表紙の太ったカバさんがあまりにもかわいくて選んだ一冊です。

お風呂が大好きな「ぼく」が、あひるの「プッカ」と湯船に入っていると、カメやペンギン、オットセイやクジラまでが次々と現れ、最後はみんなで代わり番こに50まで数えます。表情豊かな動物たちに夢中になり、もう何十回読んだかわかりません。私が適当に読むと、全部覚えている息子に「違う!」とよく怒られたものです。

先日、その息子と孫と一緒に日帰り銭湯へ行きました。すると売店にあった黄色いアヒルの人形を手に取った息子は、娘に「プッカだよ」と、当たり前のように話していたのです。大人になっても忘れることのない、あの頃の記憶。その光景に、私は思わず胸が熱くなりました。

遊び心と大冒険 

本の表紙にもなっている代表作が『こんとあき』です。主人公の「あき」が、きつねのぬいぐるみの「こん」と一緒に、「さきゅうまち」のおばあちゃんちを目指す大冒険。途中ではぐれたり、こんのほころびがひどくなったり…ハラハラし通しですが、読み終わると、誰もが安堵と幸せな気持ちに包まれる不思議な魅力があります。

林さんの絵本には、他の作品のキャラクターが「隠し絵」としていろんなところに登場する宝探し的な面白さもあります。『こんとあき』では、電車の乗客として林さんの「スキ♡」がたくさん。サンタさんもいるので、探してみてくださいね。

読み継がれていく絵本

『こんとあき』を読むたびに、私は訪れたことのない鳥取砂丘へ行ってみたくなります。いつか広大な砂丘に立って、こんとあきの小さな足跡を探してみたい。そんな夢を抱かせてくれるのも、絵本が持つ魔法の力です。

私が林さんの絵本を愛しているように、日本中の子どもたちと元子どもたちが、これからも林さんの絵本を愛し続け、やさしい世界はずっと先まで読み継がれていくはずです。

そしていつか、これらの絵本を集め、お母さんたちみんなで読んで、感想を言い合う会を開いてみたい。そんな夢も生まれました。

(青柳真美)

お母さん業界新聞 8月号