お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

変革を担う、母であること

「何かを始めることはやさしいが、それを継続することは難しい。成功させることはなお難しい」。

今年、発行される新紙幣の顔となる、津田梅子の言葉。1871年に岩倉使節団の一員として渡米。わずか6歳で親に見送られ横浜港を出たという。

私の孫と同年齢。梅子さんもスゴイが、この歳で娘を手放す母もスゴイ。

未来の梅子を描けていたのだろうか。

帰国後、男女の教育格差に衝撃を受け、それをきっかけに、後に津田塾大学を創設。女性の社会進出に大きな功績を残した。同大学の理念は、「変革を担う、女性であること」とある。

並べるのはちょっと気が引けるが、ここへきて、お母さん大学をカタチにしようという話がある。理由は2つ。

お母さんになれない人が増えているから、お母さんになるための場が必要。なのでお母さん大学をつくり、お母さん教育を強化しては、ということ。

もう1つは、私がボケる前に、いや、これ以上ボケが進まないように、成すべきことをやりましょう、ということ。

お母さん大学は、カタチのない大学として、17年前にスタートした。一人ひとりのお母さんの心の中にある、学びの場。わが子が先生であり、キャンパスは家庭と地域。宿題はペンを持つこと。そう言い続けてきた。

しかし、時代は変わった。

デジタルやAI社会が進む中、いまどきペンを持つなんて古い、目に見えない価値を伝えるお母さん大学なんてウケない。が、このスタイルにこだわり、今なお続けているのは、ここで学んでいるお母さんたちの母ゴコロが、とびきりいいからだ。

お母さんを学ぶ場は、半径3メートルの世界(家庭)でしかありえない。日常の中で、母となり、人間となる。そこには、母から子へ伝えるべきことが、たくさんあるはずだ。

冒頭の「成功させることはなお難しい」という言葉が気になった。すでに功績を残している偉大な人なのに、心残りだったこととは、一体何なのだろう。

梅子さんが言う「変革を担う、女性であること」を私流に言うとすれば、「変革を担う、母であること」か。

新五千円紙幣となって登場したとき、津田梅子を知る人はどれだけいるのだろう。多くが財布を持たず、スマホで買物をするが、私は紙幣を使いますね、梅子さん。残された言葉の意味を、私なりに考えるためにも。

先日あるお母さんが「ペンを持つことをもっと広げていきたい」と、私のところへやって来た。私にできることは、夢に向かうお母さんに「やれるよ。やればいいんだよ」と言って、背中を押すことだ。

夢を描くお母さんの笑顔は最高だ。

そのお母さんを見て、子どもは育つ。そして私も、その笑顔に元気をもらうのである。
(藤本裕子)

コメントを残す