お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

1番の親不孝

「この子より、1分でも1秒でもいいから長生きしたい」

幸一の関係で知り合った障害児のお母さんたちとランチをする度に、最後はそんな話になる。

『親より先に死ぬのが1番の親不孝』
何度も聞いたことがあるセリフ。
それが、こどもが障害を持っていると逆になる。
その子の将来が不安だからだ。

誰かの力を借りないと生きていけない我が子。
親が亡くなった後の生活がどうなるのか
住み慣れた家から出て、施設で生活する場合も多い。
職員からの虐待のニュースは後を断たない。

壮絶な現実のなか、日々子育てをしている。
自分以外に安心してこどもを託せる場所がない。
だから、ずっと手元に置いておきたい。
家庭で地域で自由で安全な暮らしを送らせたい。
そんな親心がある。

でも、私は違った。

幸一より先に死にたい。
というか単純に長生きをして欲しい。
そう願っていた。
私以外のひとと生活をともにすることが当たり前になるゆように。
その為に、週の半分はヘルパーさんに泊まり込んでもらい私がいなくても息子の生活が成り立つよう準備していた。

だが、今日、ふたりから4時間の間隔を開けて
偶然にも同じことを言われた。
「幸一の寿命は短い」と。

ひとりは私より一回り上の障害者のお母さん。
福祉の仕事をしておられ、多くの障害児の生死に関わって来られている。
気管切開をした場合、一般的に80代まで生きることは難しいと言われた。4.50年生きることが出来るかどうかだと。

もうひとりは経験豊富な看護師さん。
幸一の様子を伝えると老化が始まっていると言われた。
呼吸をつかさどる神経の衰えもあると。
いつ呼吸が止まっても不思議ではない状況だと。

だから、2人とも幸一の退院後の生活をうんと楽しませてあげて欲しいと語られた。

寿命のことなんか考えもしてこなかった。
幸一の姉や兄と同じように年を重ねて行き
幸一もおじいちゃんになるんだと思っていた。
感情を無くしたわたしの目から何故か涙がこぼれた。

真実は分からない。
人生、何が起きるかも分からない。
命の長さ、神さましか知らない。

ただ、2人とも信頼できる方である。
闇雲に不安をあおるようなことをする人たちではない。
幸一のことを思って、あえてわたしに辛い話をしてくれたんだと思う。

必死で生きている幸一。
1日も早く、家に連れて帰りたい。