お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

ぞうのババールと音楽と、そしてコロナと子どもたち

横浜市磯子区にある杉田劇場。
コロナ禍でなかなかホール事業が大変な中、
近所の保育園の子どもたちを招待して演奏会を行うというので、図々しくもお邪魔した。

お母さん大学でも、えほん箱プロジェクト、という
絵本を通して、親子のふれあいや時間を大切にしませんか?という取り組みが始まっていることもあり、楽しみにしていた。

絵本と音楽。
本当に素晴らしかった。
どちらも大好きで、いいものだろうなと、ある程度想像はしていたのだが、
実際はそれ以上のものだった。
絵本の中から厳選した部分をプロジェクターでステージに投影し、
フリーアナウンサーの岩崎里衣さんが物語を読み進めていく。
そして掛け合いのようにピアノを弾くのは、横浜市出身のピアニスト、尾城杏奈さん。
「ピアノと語り手のための音楽物語『ぞうのババール』」という一つの作品で、秀逸だった。
ババールが、悪い狩人に襲われ、逃げて逃げて、人間の住む都会の街にたどりつき、そこで出会った人たちとの心あたたまるお話。
愉快なおはなしだと理解していたが、音楽と融合されたこの作品は、
どちらかというと、オシャレな、フランスかどこかの古い映画を見たような感覚になった。

  

すっかり、子どもたちがいることなど忘れていたのだ。
周りの子どもたちと一緒に、
絵本と音楽の世界にまんまと迷い込んでいた。

親子でこんな時間を楽しめたらどんなにステキだろう・・・
お母さんは非日常を、
子どもたちは見たことのない夢の世界を過ごせたら。

今回、感染症対策を施した中での開催だった。
ステージが始まる直前に、
先生と一緒に歩いてやってきた子どもたちは、興奮度MAX!
はじめて入るホール。目の前のステージにある大きなピアノ。
一人でポツンと座る私にも、手を振ってくれる無邪気な子どもたち。

そんな時、

「せんせー、席をひとつあけたほうがいいんじゃない〜?」

入ったばかりで、子どもたちを席にとりあえず座らせた状態で、ある子がこう言った。
もう、この子たちの生活には、感染症対策というものが、当たり前に自然にあると感じた瞬間。

新しい生活様式とは何か。
とても大事なことだし、みんなのいのちを守ること。

でも、私はやっぱり、
ライブで音楽を楽しめるしあわせを、忘れずに伝えたいなぁ。
人と人がつくる空気のあたたかさを、伝えたいなぁ。
このような時期だからこそ、
このような機会を、子どもたちにプレゼントしてくれたスタッフの方々の思い。
そんなことを、マスクをつけたまま帰っていく子どもたちを眺めながら思っていた。

 

音楽物語「ぞうのババール」
原作:ローラン・ド・ブリュノフ
作曲:フランシス・ブーランク

ピアノ:尾城杏奈(第44回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ受賞)
語り :岩崎里衣

会場 :横浜市磯子区民文化センター 杉田劇場