お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

成しとげる母力(ぼりき)その② プロジェクト始動

プロジェクト始動

有頂天になっていた私にすぐに藤本さんからダメ出しが入った。「一日だけのイベントで終わらせたくない。永守さんには、日本中のお母さんの応援団長になってもらいたい」と言われ我に返った。

単なる私個人の夢企画ではなく、お母さん大学のプロジェクトとして進めていくことになった。2022年9月7日、藤本さん、青柳さん、金子さん、植地さんらスタッフを交え横浜みなとみらいのワーホプレイスとらんたんにて企画内容の見直し作業が始まった。

まず、藤本さんから投げかけがあった。「なぜ、今このプロジェクトなのか?」

「ダイバーシティ」や「男女共同参画社会」という概念のもと、男女は対等でなければならない、子育てはお母さんだけのものではなく、お父さんも主体者であるべきという考え方が定着しつつある。「お母さん」は赤ちゃんを産む人、子育ては社会全体で行おうという風潮だ。子育て=お母さんの仕事という考え方はもう古い?

多くの関わりの中で子どもが育っていくことは望ましいが、お母さん自身の当事者意識が薄れ、「子育てを押し付けないで」と声を上げているのが気になる、と藤本さんは残念そうに言う。

私は驚きとともに、「そんなことでは母力(ぼりき)が育たなくなってしまう」と心配になってしまった。命を授かった日から10か月間大切にお腹の中で育て、命がけでやっと産んだ我が子を堂々とかわいがることが出来ない世の中になってしまったの?お母さんは子育てしているよりも仕事で輝いていたほうが素敵なの?驚きと心配は悲しみに変わった。

「経済界の永守さんが、お母さんたちを応援をしてくれることに意味がある」と藤本さんは続ける。

まえがきでも少し触れているが、永守氏のお母様は日々の子育てを通して氏の人格形成に大きく関わった方である。その証拠に『成しとげる力』には「母」という文字が30回以上も登場する。体裁はビジネス書であるが、リーダーを目指す人々のための単なる指南書ではない。

自らの生い立ちや生きざまを赤裸々に語り、なぜ社長を目指したのか、何を大切にし、どう行動したから現在があるのかが手に取るようにわかる氏の半生の記でもある。さらに、後進の育成のために手掛けている大学教育へ理念、企業や社会で求められる人材とは何か、そのうえでリーダーに求められる資質とは何かが綴られている。

もっとも注目すべき点は、永守氏を支えた「二人の母の存在」である。ひとりは永守氏のお母様、そしてもうひとりは二人の子をしっかり育てあげ、永守氏を支え続けた奥様。あとがきの部分とはいえ、母親と妻に感謝のことばを述べているビジネス書が他にあるだろうか?

我が子をどのように育てたらよいか?どのような言葉がけをすれば社長を目指す気概のある子になるのか?たった4人で創業した小さな会社がどのように世界トップレベルのシェアを誇る会社に成長したのか? 子育て中のお母さんたちにも大いに参考になる一冊である。

なぜ今このプロジェクトなの?

-ダイバーシティや男女共同参画の名のもと後退しかけている母力(ぼりき)。社会の宝である我が子の子育てを通してお母さんたちが母であることに自信と誇りをもって子育て出来る社会の実現を目指す。母の教えを座右の銘にして育ち、モーター業界において一代で世界トップシェアを誇る会社に育てあげた日本電産の永守氏だからこそできること。永守さんにしかできないこと。

それは、「お母さん」というものがいかに偉大な存在であり、「子育て」は未来づくりという、最も大切で尊い仕事であるかを、経済界の人々はもとより、お母さんを含むすべての人に伝えることではないかと思い至る。

お母さん一人ひとりの思いや力は弱いけれど、百万人のお母さんがつながれば、世界を変えることもできるかもしれない。永守氏に、「お母さんの応援団長」になっていただきたいと、思いを伝えよう。

2回目の会議までの一週間で私はもう一度『成しとげる力』を読むことにした。

コメントを残す

ABOUT US
永安英美子
神奈川県横浜市在住。3人の息子の母です。お母さん大学と出会ったことで51歳で横浜市立中学校正教員になる夢を叶え、2019年3月に定年退職しました。2019年のクリスマスに初孫が生まれました。そして2022年の秋に二人目の孫が誕生しました。小田和正さん、親子ユニットのダ・カーポさん、宝塚歌劇団宙組の桜木みなとさんのファンです。趣味は劇場通い、断捨離です。船は見るのも乗るのも大好きです。常に夢を追いかけている人生です。どうぞよろしくお願いいたします。