桜が満開を迎えた3月下旬。池袋のとしまセンタースクエアであった多文化共生子育てフェス2026「世界赤ちゃん祭り」(Mother’s Tree Japan主催、豊島区共催)で、ミャンマー人のミャさんに出会った。
タナカという黄白色の頬化粧をして民族衣装をまとったミャさんと、ふと、野菜の価格高騰の話に。
「オクラ高いですよね」「子どもに食べさせたいと思ったけど、値段を見て、手が出ませんでした」「ね~!」と、顔を見合わせて笑い合った。


同じ時代に同じ場所で子育てをしている私たち。もとの言葉や文化は違うけれども、母として感じる想いはひとつも変わらない。違うけれども同じ。そんな想いと笑顔が250人超の来場者と多文化の母たちの垣根なく、そこかしこにあふれる時間が広がっていた。
3回目を迎えた世界赤ちゃん祭りの今年のテーマは「みんなの実家」。
祭りでは、ネパール式ベビーマッサージや世界のじゃんけん大会などのほか、想いを重ねた団体や企業も参加。また各国ブースでは実家体験として、趣のあるお茶やお菓子がふるまわれた。来場客は、タイの産後ケアとして伝統的なユーファイ、中国のお灸などで体も心もほぐれながら、産前産後の風習や文化紹介パネルに見入りつつ、各国の母たちと子育て談義に花を咲かせて、会場全体が一つの実家のような空間になっていった。
キンマのゆで汁で沐浴
ミャンマーの「実家」を訪れると、そこの風土ならではの子育てが紹介されていた。たとえば殺菌や炎症を抑える効果のあるキンマの葉。熱冷ましやあせもにも効き、ゆで汁で赤ちゃんの沐浴にも使うとか。生えたての眉毛につけると、濃い眉毛になるという習わしもあるという。在日18年で1歳7か月の息子がいるミャさんは、実家の母に「日本にキンマはないの?使ってあげて」と言われ、やっと手に入れた際には、一度息子の眉毛にも使ってみたことを笑顔で教えてくれた。
子育て一つとっても、国や地域が違えばこうも変わる。なんと豊かなことだろう。正解は一つじゃないと教えてもらっているようだ。
お母さんのための絵本『りんごのきのしたで』
この日、訪れた人に初公開で贈られたのは、お母さんのための絵本『りんごのきのしたで』。

初めての子育てに戸惑い、赤ちゃんと二人きりで不安を抱えるお母さん。甘いりんごの香りに導かれ、大きな木の下へ。やがてまた一人、国を越えた母たちが知恵を持ち寄り集ってくる。「つながること」と同時に「一人でいる時間」も大切に描かれた、とまり木のような絵本だ。
日本で暮らす外国人ママの産前産後のサポートをするMother’s Tree Japan(以下MTJ)の活動に共感したイラストレーターのいわたあきこさんが絵と言葉を紡ぎ、MTJの活動に参加する多言語の母たちが9ヶ国語に翻訳した。
赤ちゃん祭りでは、バルーンでかたどった大きな木の下でいわたさんによる絵本の朗読会や、日本で子育てをしている各国の母たちも参加したトークショーも。
MJT事務局長・坪野谷知美さん: 子育ては楽しいけれど、時に「これでいいのかな」と孤独や不安を感じることもありますよね。今日は、核家族化が進むなかでの「21世紀の実家」について、子育てで心が少しでもラクになるヒントを皆さんと考えていきたいと思います。
いわたさん: はじめの数ページは自分の育児を思い出して、泣きながら絵本を描きました。お母さんにかかる責任に、「私次第でどうにでもなってしまう」というこわさがあったんです。でも、大きな木のシーンを描いた時は楽しく筆が進んで、本当に幸せな気持ちでした。今なら、もっとはじめから子育てを楽しんでよかったんだなと思います。自分のことすごくほめてあげてよかったし、お母さんたちすごい!って言いたいです。一番苦しかった時、私は「助けて」が言えなかったですが、いまのお母さんたちには勇気をもって、困ってるって伝えてほしいです。
リュウさん(中国出身): 来日して13年ですが、ママになってからまた別の世界に入ったような思いで、コロナ禍での出産は本当に不安でした。でも支援センターや周囲の方のサポートのおかげで、ようやく「わかってきた」と思えるようになりました。子育てに関する制度などの情報が届き、ママ同士の横のつながりがあるだけで、安心感は全く違います。
ザヤさん(ネパール出身): 18年前に夫の仕事で日本に来た時は言葉も文化もわからず、1人目の時は本当にさみしかったけど、いろんな周りの方の協力もあって2人目はだいぶ楽になりました。絵本はとても感動して、涙を拭きながらネパール語に翻訳しました。私が伝えたいのは、「自分らしく、自分のペースで」ということ。誰かと比べるのではなく、お母さんがハッピーでいれば、子どもも街もハッピーになります。それが完璧な子育てではないでしょうか。外国のママでも日本のママでも子育てしている方たちが何かしらで気持ちでわかる、触れ合える場所があったらいいですね。

アフィファさん(バングラディシュでの育児経験): 2人目まで日本で出産をしました。育児も家事も一人でやるのが当然というのは、ちょっと寂しかったです。バングラデシュの大家族の中で始まった3人目の育児は、本当にラクでした。おじさんとかおばさんとかいとことか、その家に関わっている人たちみんなで子どもを見てくれてるんですね。日本に戻ってきて「これをしなきゃ」というのが学校でもあると思いますが、みんな違って当たり前なんだよ、と自分らしく子どもに伝えてほしいです。
織田博子さん(漫画家): 著書『世界の子育て くらべてみたら 心がふわっとラクになった』のために40か国以上の方にインタビューして、MTJのお母さんたちにも話を聞きました。自分の知らない国で、子育ての途中からMTJのお母さんたちのための活動をしているみなさんは、すごく能力が高くて行動力があって、素敵でチャーミング。その人たちに触れられるというのは私にとってとても楽しいことです。いろんな価値観や文化のなかで子育てをするっていうのは、すごく豊かなことだなと思っています。私は東京で核家族として3人の子育てをしていますが、自分のなかでの21世紀の実家は、血縁関係だけじゃなく、周囲の大人を全部巻き込んだいろんな人間関係があっていいんじゃないかなと思っています。

各国のブースで多文化の子育ての知恵に触れ、「大きな木」のしたで、赤ちゃんを抱きながら、耳を傾ける日本のお母さんたち。軽やかな笑顔で会場を後にした姿が印象的だった。

いろんなやりかたで。自分のペースで。違ってたって同じだっていいんだよ。
それを母たちがまず、感じて楽しめたら、小手先のことじゃなく、気持ちをゆるめられたら、それを子どもたちに繋げられたら。どんな社会が広がっていくだろう。
この春お母さん大学では、Mother’s Tree Japanの多文化のお母さんたちを記者に迎えて交流がスタート。おいで!「大きな木のした」に。そんな時間が広がっていくことを願っています。
































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