お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

母100%になるということ

長年新聞をつくってきたが、この新聞は、この活動は、
本当に悩んでいるお母さんのためになっているのだろうかと、思いあぐねる日々。

そんなときに、お母さん大学生の小林順子さんが書いたエッセーが、
NHK障害福祉賞・最優秀賞に選ばれたというニュースを知ってうれしかった。

わずか3歳で診断された息子の病名は「最重度知的障害の自閉症」。
「障害は病気ではないので治らない」「一生しゃべれない、一生オムツをはずせない」という医師の言葉に、
泣きながらも立ち上がることしか選択肢がなかった順子さん。

ーー私は「小林順子」でなくなった。そして「小林将(じょう)の母100%」になった。ーー

その後、順子さんに神様は「乳がん」という、さらなる試練を与えた。
しかもリンパ節にも転移。

わが子のために母を生きることを選択した順子さんにとって、
母100%どころか、0%になるかもしれない宣告は、
苦しい治療以上に過酷なものだったに違いない。
けれども順子さんは生き抜いた。

「息子より1分でもいい、いや1秒でもいいから長生きしたい」
順子さんの言葉が私の脳裏から離れない。

障害があろうとなかろうと、わが子を一人にできる親などいるはずがない。

だが一方で、わが子を育児放棄する母親も少なからず。
児童養護施設には、さまざまな理由で親と離れて暮らす子どもたちがいる。

これほど過酷な運命を与えられても、わが子のそばにい続けたい母親と、
わが子のそばにいられない母親との違いは何だろう。

21歳になった将さんは今、生活介護事業所で働いている。
乳がんを乗り越えた順子さんのライフワークはフラダンス。

息子を支えてくれる人々に「マハロ」(ありがとう)の気持ちを込めて美しく踊る。
傍らには、それを誇らしげに眺める将さんがいる。

「自分が高齢になったら、息子とともに生活ができる施設をつくりたい」と順子さん。
マハロ!と思いを伝えていけば、助けてくれる人や知恵を与えてくれる人と出会う機会は、無限にあるだろう。

「何かできるかも」と、私にも勇気を与えたくれた順子さんと将さんにマハロ!

お母さん大学恒例の乾杯イベント。今年の乾杯はハワイに行こう!
行けないけど、行った気分で。7月30日、がんばっている自分に、
そして夢に乾杯!

すべてのお母さんが、100%母を楽しめる社会を目指し、
「私には何ができるか」をみんなで考える日です。

お母さん業界新聞2021年6月号 藤本裕子編集長コラム・百万母力