当たり前の明日がくること

7年のブランクを経て、看護師として働き始め2ヶ月がたった。

働き始めてすぐに、初めて受けもたせて頂いたAさん。

90歳目前の、笑顔の可愛いおばあちゃん。

末期ガンだったが、ご家族の意向で告知はされていなかった。

その日は、吐き気が強く、背中をさすり寄り添った。

Aさんはポツリポツリと話し始め、

「こんな歳まで生きていてもね、死に向かうっていうのは怖いし、淋しいものだね…

もう前のように美味しくご飯も食べられないんだと思うと辛いね…

家に帰りたいけど、家族に迷惑かけるから…暖かい家で、温かいご飯が食べたいね…

目を瞑るのが怖いよ。二度と起きられない気がする…」

最後には、涙を流されながら話された。

そんなAさんの言葉に、私はただただうなづき、手を握り話を聴くことしかできなかった。

そんな私の手を見て、

「綺麗な手だね」

と言われたので、

「Aさんの手は頑張ってこられた手ですね」

と返事をした。

「そうなのよ。すごく頑張ったの。

戦争も生き抜いて、ここに嫁いで息子も2人育てた。畑仕事も一生懸命やったのよ」

と、これまでの人生についても話してくださった。

最後には、

「そばにいてくれて、話を聞いてくれてありがとうね」

と、言ってくださった。

久々に看護師として患者さんに関わった日。

そんな言葉を言ってもらい、ブワッと鳥肌が立ったのを覚えている。

改めて、この職業のやりがいと難しさを感じた瞬間だった。

 

その日から日に日に、Aさんの身体は小さくなり、笑顔も少なくなっていった。

パート看護師の私には受け持てる状況でもなくなり、顔をみる機会も減ってしまったが、

ちょっとでも顔を出すと、握手をして、

「綺麗な手だね。ありがとうね。また来てね」

と笑顔を見せてくれた。

 

 

 

今日仕事に行ったら、昨夜Aさんが亡くなったとのことだった。

最後に会ったのは先週で、

「また来ますね」と握手したのが最後だった。

 

 

今日は朝からみんな寝起きが良くてご機嫌だった。

小1長女の選んだ洋服がおかしいから、直すようにいったら言い合いになった。

ムスッとしたまま出発させてしまい、気持ちよく行かせてあげれば良かったと後悔した。

年少の次女が朝から、「ママ、今日もお仕事がんばってね」とニコニコ言ってくれた。

そのあと、髪型が気に入らないと怒り狂って大変だった。

末っ子息子は、いつも車から託児所に向かう途中、ちょっとした排水溝の隙間で止まる。

「こわい〜」と言いながらも、ニヤニヤそのスリルを楽しみ、ジャンプして渡って喜ぶ。

そんなお決まりパターンを見るのが幸せ。

仕事が終わって、託児所に末っ子息子を迎えに行き、昼寝途中なのに、一瞬起きて「ママ〜」と駆け寄ってくる姿が可愛い。

抱っこして車に乗ると、またコテっと寝る。

車のミラー越しに見る寝顔がまた可愛い。

そのまま次女の幼稚園に迎えに行き、

小1長女が帰宅して、みんなでおやつタイム。

みんなで今日あった出来事を報告しあう。

途中、「今ははーちゃんがお話してるの!!」と姉妹喧嘩になるのがお決まりのパターン。

休む間も無く、急いで夕飯の支度をざっとして、みんなで公園へ。

近所のお友達と、大縄跳びにハマっている。

今日の夕日はオレンジ色で綺麗だった。

カラスが鳴いて、カーカーと真似する次女と息子が可愛かった。

縄跳び列車で家まで帰宅。

3人揃って公園に行く時間はあと何年かな…なんて思った。

夜はなかなか宿題をやらない長女にイライラ。

眠くてぐずる下2人にまたイライラ。

歯磨きタイムでは、2歳の息子がガラガラペッを何度もやってパジャマがビチョビチョになった。

ヘラヘラ笑って、疲れはピークの私はイラッと怒ろうとした瞬間、

「ガラガラ上手になったね」と褒めるねぇね2人の一言に冷静になり、救われた。

いつものように、みんなで寒い寒いとくっついて川の字になって眠りについた。

みんなの寝息がスースー聴こえる。

 

 

Aさんにも

今日の私のように

泣く我が子を抱っこして、一緒に笑って、イライラして怒って、お母さんしていた時があった。

そんな当たり前の毎日があったのだ。

 

 

また明日がくる。

明日はお弁当の日だ。

ご飯はタイマーしたかな。おかずは何にしよう。

当たり前の明日が、繰り返されるこどもたちとの日常がまたくる。

そんな風に思える私は幸せだ。

何気ない毎日を、この瞬間を一生懸命生きようとおもった。

 

そんな風に、改めて思わせてくれたAさんとの出会いに感謝。

 

8 件のコメント

    • そうそう、90近くになってもずっとお母さんなんですよね。
      息子さんの迷惑になりたくないとか、優しい子なんだよ…とか話される姿は、しっかりお母さんなんです。
      お母さんに心ってすごいなぁ。強いなぁ。

  • 泣けちゃいました・・・
    毎日のバタバタでつい忘れそうになってしまうこと、
    でも、こんなバタバタが何よりも幸せな時間であること、
    私もおばあちゃんになって、今のこの時間を懐かしむ時が来るんだろうな。
    いまはその時のための宝物を貯めてる時期なんですね。

  • お母さんって子どもが小さい内だけじゃないんだよね。
    家の母も古稀を向かえた今でも自分の子どもたちが気になるみたい。
    そして、イライラしてる私に対して「今が一番良い時代だよ。」と言う。
    本当にそうなんだと思う。

    病院って生まれる命もあれば、人生の旅に終わりを迎える人もいる 色々な人がいる。 そこでお仕事してる看護師さん、尊敬するよ。
    日々、本当にお疲れ様。

    • さぁちゃん、ありがとう。
      ほんと今が一番幸せなんだろうなぁって、私も思ったりする。
      どんだけ味わっても、きっと歳をとったら、もっと楽しめば良かったと後悔するんだろうね。
      みんなでお茶飲みながら思い出話しようね。笑

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    脇門比呂子

    神奈川県横須賀市に住んでいます。 長女8才、次女5歳、長男3歳、3人のお母さんやってます! まさか自分が3人の母になるとは?!同じ繰り返しの日々のように感じ、悶々としていた時にお母さん大学に出会ったのが3年前。 ありのままの自分に自信が持て、子育てが心から楽しめるように!MJプロです^_^