- 白書取材記事 安藤裕子 取材先/心ゆるり
1週間経ってもなお、「心ゆるり」の代表豊田晴子先生の笑顔が色鮮やかに目に浮かんでくる。それは、草原のように涼やかで、大自然のようにまるっと包み込んでくれるかのような、それでいて凛としていた笑顔。お名前通り晴れやかな笑顔だった。
2026年6月11日、お母さん大学生として初めての取材に行ってきた。取材先は福岡県小郡市にある、産前産後ケアハウス「産前産後サポートセンター心ゆるり」。
福岡支局は、2023年度休眠預金等活用事業「困難を抱える家庭を取り残さない仕組みづくり」に採択され、一緒に事業を行う6団体の一つとして、この3年事業に取り組んでいる。事業3年目を迎えるにあたり、本事業や各団体の活動・思いを伝えるための白書を作ることになり、その一つとして、各団体が日々の活動の中で受け止めてきた子どもや保護者等の声を聞かせてもらうことを目的に、お母さん記者が各団体の取材に行くことになった。
実は、以前から行きたかった場所でもあったので、今回の話が出た時、一番に手を挙げた。本来なら、産後すぐに行きたかった。なぜなら場所の空気感を自分の肌で、感覚で、感じたかったから。
到着してすぐ、この場所は、豊田先生をはじめスタッフの皆さんが、お母さんをはじめとしたがんばる人すべてを受け入れてくれる場所なのだと理解した。そんな雰囲気があちこちから感じ取れた。
看護師である私にとって、今回の取材で、豊田先生の看護師時代の実体験の話を聞かせてもらったのは、とても贅沢な時間だった。
目の前にいる低出生体重のちいさなちいさな赤ちゃんたちを前に、自分の無力さを感じ、未熟児で生まれてくる理由を考えるには、産前から関わらないと分からないと助産師になる決意をしたそうだ。低出生体重の赤ちゃんを産んだお母さんたちに、助産師になってすぐアンケートを取った。そこから見えてきたのは自分を責めてしまうお母さんたちの声だった。ドライブに行かなかったら?引っ越しをしなかったら?と、つい考えてしまう。産後の体の疲れやホルモンの変化からメンタル低下し、マイナスな思考になる事もあるのかもしれないと感じた。
豊田先生は、看護師時代からのすべての想いが積み重なり、唯一無二のことを成し遂げている。この地域の産後ケアの第一人者だ。助産師になった後、がんばっているお母さんたちが、実家のようにくつろいでもらえたらと考え、日常の中で子育てを見守れる場所として産後ケア専門の「心ゆるり」をオープンした。また、行政にも産後ケアの必要性を訴え続けてくださり、今では産後ケアが当たり前な世の中になってきている。
また、中には、赤ちゃんを育てていく中で、遊ばせ方がわからないと話すお母さんもいる。だから、心ゆるりでは、月齢に応じた赤ちゃんとの遊び方や関わり方も伝えている。
家ではタスクが多く、なかなかお昼寝ができないお母さんが「心ゆるり」を訪れ、「安心して爆睡してくれたのよ」とうれしそうに話もしてくれた。
「ぜんぶ疲れが原因なの」。そう話す豊田先生の表情は愛で溢れていた。
産後に苦しむお母さんたちは、疲れているからすべてが悪循環に向かってしまう。思考も体力も精神力も、疲れの前には、ただただ無力だ。だから、「疲れを癒やしに、ただお昼寝するだけでもいいから来てね」と言う。
心ゆるりでは離乳食や遊び方など、家に持ち帰ってもらえるように、と実家のような空気感を作っている。
なので、心ゆるりに訪れているお母さんからは、例え発達の悩みがあったとしても、他のお子さんたちやお母さんたちとの関わりの中で、来月はこんなことが出来るようになるんだ、という学びがあり、ストレスなく待てる力や感じ取る力が育つそう。
また、「心ゆるり」では、「産前産後サポーター養成講座」を年に数回、開催している。それは、今、たくさんのお母さんが、産後、メンタルや子育てで苦しんでおり、「心ゆるり」を見つけて豊田先生やスタッフさんの笑顔に会いに来るからだ。さまざまな地域や居場所、産後ケア施設などで、お母さんたちをサポートしてくれる人を増やしていく必要性があるのだ。
一度会ったら忘れられない人。忘れられない場所。それが「心ゆるり」。
今もあの取材の日を思い返すと、私の体の中には草原のような清々しい風を感じることができる。あの場所が苦しくて仕方ないお母さんたちに届きますように。
豊田先生の笑顔に早く会えますように。
願ってやまない。


































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