絵本タイムマシン

職場の上司からいただいた絵本。
「ぼろぼろでどうしようかと思ったけど、コレうちの子どもたち好きみたいだったから読んでみて」。
カバーはなく、ところどころ擦れたり、黄ばんでいたが、有難くいただいた。
タイトルは、「よるのびょういん」。

上司の言った通り、保育園児だった子どもたちはこの日からこの本にくぎ付け。
毎日読まされた。
主人公の男の子が夜中に盲腸になり救急車で運ばれる話。
終始白黒の実写真に添えられた淡々とした文章。
それが、めちゃくちゃリアルで引き込まれる。

「お母さん業界新聞で絵本特集するらしいから、
昔好きだった絵本教えてよ」。
もう、絵本なんて興味のない年齢のわが息子たちに聞いても「覚えてない」という。
本棚から引っ張り出した「よるのびょういん」を見せると、
おおお~~と懐かしむ。
別に好きじゃないけど、キニナル本、らしい。

そんな話をしていた翌日、
息子が救急車で運ばれた。
幸い腕の骨折で済んだがしばらく入院して手術となった。

「よるのびょういんみたいじゃん」

笑えない冗談か。
思春期で話もしたくないだろう母親に嫌でも話をしなければならない状況。
世話を焼きたくなる私の手を振り払う息子。
はじめての手術は不安だろうに、「がんばってね」という私を振り返りもせずスタスタ歩いていく息子。

でもなんだろう、全然腹が立たないんだ。
あの頃、目をキラキラさせて一緒にみんなで絵本を読んだ時間。
『いつか救急車に乗ってみたいなぁ~』
そんな話もしたっけ。
乗れてよかったねぇ、良かったのか悪かったのか。

懐かしい絵本を開けば当時の記憶がぶわっとよみがえる。

絵本で共有した時間って、
あたたかだったなって、
長い年月を経てから、思っている。

よるのびょういん
谷川俊太郎 作/長野重一 写真
福音館書店

ABOUTこの記事をかいた人

植地宏美

2019.10月創刊、横浜版編集長。新米だからこそ怖いものなし! 3人の子育て中、シングルマザーです。 楽しいこと、好きなこと、なんでもやってみないと! 子どもたちにもそうあって欲しいと願う、毎日。