お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

チョコ募金でイラクの小児がん患者を支援

日本イラク医療支援ネットワーク
「JIM-NET(ジムネット)」
〜チョコ募金でイラクの小児がん患者を支援〜

平和な日本を生きる子どもたちに、母として伝えていくべきことがある。第二次世界大戦中、1945年8月6日に広島へ、9日には長崎への原子爆弾投下があった。命や平和について改めて考えたいと、イラクの小児がん(主に白血病)に苦しむ子どもたちのために活動(子どもたちを支援)するJIM-NETスタッフ、大嶋愛さんに話を聞いた。

JIM-NETとは?

1991年の湾岸戦争以降、イラクではがんや白血病の子どもたちが増えている。現地医師から長崎の医師に調査依頼があったことをきっかけに2004年、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)が立ち上がった。
同じ場所に数団体が入っていたため、重複していた支援をまとめ、無駄なく効率的に、専門性を保ちつつ継続的に活動できるよう、ネットワークを構築した。
代表の鎌田實さんは「軍隊を増強して相手を黙らせるのではなく、支援の手を差し伸べることで暴力の連鎖や恨みの連鎖から抜け出せるのではないか。イラク戦争では日本の自衛隊をイラクに派遣し、アメリカの攻撃に加担した事実から、イラクへの医療支援の責任がある」と話す。

入院中の子どもの母親と話すJIM-NET 代表の鎌田實さん

JIM-NETハウスの役割

外務省の助成を受け、イラク国内のクルド人自治区主都アルビルのナナカリ病院敷地内に建てられた、小児がん総合支援施設JIM-NETハウス。ここは治療中の子どもたちのQOL(Quality Of Life)を高める場所。子どもたちは勉強をしたり、絵を描いたり…。鮮やかでカラフルな建物は小児病棟からも見えるようになっている。子どもたちには「あそこに行きたい」と希望を持って生きてほしいという願いが込められている。

現地には課題が山積している。病院で処方される薬は限られ、もらえない場合は自費で買わなければならない。そのため親は自らの食費を削り薬を調達する。また子どもを見舞うためには遠方からタクシーで通うしか方法がない。やむを得ず病院のロビーや外で寝泊りする人も多かった。
JIM-NETでは治療や薬に充てるお金の支援はもとより、JIM-NETハウスを親や家族たちの宿泊場所として提供している。

そのほか、医療従事者研修を実施し、感染症対策や子どもたちの心のケアに対しての意識を上げることが、子どもたちへの医療の充実にもつながっている。


小児がん総合支援施設JIM-NETハウス

チョコっとの愛に支えられて

「限りなき愛の大作戦」と称して2006年にスタートした「チョコ募金」(冬季限定)。日頃の支援に感謝し、寄付者へお礼のチョコレートを贈っている。北海道の六花亭の協力により、昨年度は12万個を受け付け、現在はJIM-NET の活動資金の柱になっている。缶にあしらわれているのは現地の子どもたちが描いたさまざまな絵だ。明るい色遣いは、戦争や病気の背景を感じさせない。過酷な現実の中でも子どもたちは、その地に咲く色鮮やかな花たち、夢や希望を素直に描く。
「絵を通して、私はここにいるよと伝えたい」。自分の描いた絵がチョコレートのパッケージになり、日本人に喜んでもらえることは、子どもの勇気や自信にもつながっている。

チョコ募金(2020-2021)絵を描いてくれた少女たち


エリーン(6 歳・白血病)


ディルガシュ(12 歳・白血病)

チョコ募金(2020-2021)絵を描いてくれた少女たち

今年度も受付スタートに向けて準備中です。
(チョコ募金の受付は11月15日より開始予定です。)

お母さんたちに伝えたいこと

JIM-NETスタッフの大嶋愛さんは、大学時代にイラク戦争が始まり、イラクに関心を寄せるようになった。「日本にもイラク戦争を反対している若者がいる。中東の人たちの声を聞かせてほしい」と、仲間と一緒にイラク攻撃反対の意見広告をアラブの新聞に出したこともある。ボランティアを経てJIM-NETで働くようになった。

イラクでは入院している子どもに付き添えるのはお母さんだけ。しかも大部屋だと簡易ベッドもなく床に寝ることもある。お父さんは病院のロビーや、暑い夏は庭で寝ることもある。入院生活の負担が少しでも軽くなればとずっと思ってきた。
ただでさえ辛くて大変な、わが子の大病。そこに追い討ちをかけて戦争があったり、不安定な政治があったりという過酷な環境。病気の子どもを支える親たちに一瞬でも安心して過ごせる場、心のよりどころとなる場を提供したいという思いが原点にある。

大嶋さんも小学1年生の娘を育てるお母さん。「保育園から続く行き渋り。毎朝行きたくないと泣かれ、困ります」と笑って話す。普通のお母さんだからこそ当たり前の生活がどんなに尊いかがわかる。
日本でもイラクでも、子を思う母親の気持ちは同じ。「ほんの少しでもいい、お母さんの心を寄せてほしい」と話す。
娘の名前「沙蘭」は、高校時代に習っていた朝鮮舞踊の経験からハングルで愛を表す「サラン」と、長く携わってきたイラクのアラビア語で平和を表す「サラーム」から付けた。遥か遠いバグダットの街を歩く日を夢見ながら、日本から愛を送り続けている。


JIM-NET スタッフ 大嶋愛さん

JIM-NETの未来に向けて

JIM-NETの小児がん支援活動の目的の一つは、現地の人々が地域のがんの子どもたちを支えられるようにフォローすること。現地では、地元団体と協力しながら支援を行っている。現在はスレイマニア県に、第2のJIM-NETハウスを計画中という。戦争や紛争がなくなり、医療が平等に受けられる社会が訪れるよう願わずにはいられない。

わが子の笑顔を望むお母さんに国境はない。さまざまな世界の問題を知り、私にできることを、それぞれが考える。サポーター制度や募金のほか不要品や本の寄付、パソコンの購入やケータイの支払いを通じた支援などJIM-NETへの支援方法はたくさんある。詳しくは、公式サイトにアクセスを。

特定非営利活動法人 JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)
JIM-NET事務局 東京事務所
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4-4-11 内藤ビル2C
電話:03-6228-0746 FAX:03-6908-6909
https://www.jim-net.org

(お母さん業界新聞 2021年8月号 МJプロ・植地宏美)

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