お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

MJレポート おばあちゃんは54人!?

左から、田村貴美子さん、お母さんの海莉さん、大森さん、りのんちゃん、山﨑さん、中村さん

「血縁のない大家族づくり」をコンセプトに活動する「実家よりも実家 じじっか」が、産後のお母さんを支える「おばあちゃんチーム」を結成。その輪は地域に広がり、メンバーは54人にものぼる。じじっかのスタッフ、関わっている地域のおばあちゃんたちに話を聞た。(池田彩)

人と人をつなぐ子育て

「ほんとに癒されるね〜」「ずっと見ていられるね」「沐浴が終わっても、離乳食をつくって届けるけん」「今日、私まだ抱っこしていないから抱っこしたい」…。

生後2か月のりのんちゃんと、お母さんの川本海莉さんを囲んで、「おばあちゃんたち」の会話が弾む。

海莉さんは初めて子育てをするシングルマザー。今、じじっかを中心に、54人もの地域のおばあちゃんたちが、食事を届けたり、抱っこしたりしながら一緒に子育てをしている。

中でも、沐浴担当の仕事は約1時間、赤ちゃんをお風呂に入れ、海莉さんがシャワーを浴びる間、ミルクをあげてゲップをさせ、抱っこしたりして見守っている。

赤の他人が入れ替わり立ち代わり家に来ることに、海莉さんは抵抗はないのだろうか。「赤ちゃんはいろんな人に抱っこしてもらったほうがいい

と聞いたし、中学生の頃、先生に、ためこまずに周りの大人に頼りなさいと言われたことがある。だから、皆さんが来てくれるのは本当にありがたい」と、笑顔を見せた。

沐浴一つとっても、お風呂場で入れる人、洗面台を使う人、ベビーバスを床に置く人…と、その方法は十人十色。「病院で習うやり方だけが正解じゃないんだとわかったのは大きかった」と海莉さん。

これまで出会ったことのなかった人たちとつながり、直接いろいろな子育ての話を聞いたり、相談できたりすることも、大きな支えになっているのだという。

「みんなで育てる」じじっかの思い

「生まれた瞬間から、これだけの人に抱っこされていたら心配ないと思う。りのんは、めちゃくちゃ幸せだ」と、じじっか代表・中村路子さんは話す。

これまで、さまざまな困難を抱える10代の

子どもたちと接してきた中村さん。「みんな困り感の背景には、幼少期の過ごし方が影響している。それはお母さんや家庭だけの責任ではなく、社会全体の問題。いろんな大人に褒められたり、怒られたりすることが大事。できるだけ小さい頃に多様な大人とたくさん関わることが、子どもの土台となっていくのだと感じている。だからこそ、じじっかだけで完結するのではなく、地域のいろんな大人が一緒に育てていくことが大切」と話す。おばあちゃん54人の意味はそこにある。

久留米市には、産前産後ヘルパー「エンゼル応援隊」という行政の支援制度もある。沐浴の補助や家事など、経験豊富なヘルパーによる大切な取り組みだ。

しかし中村さんは、じじっかが大切にしているしくみは、課題に対処する支援ではなく、「家族のように受けとめるベース」だと語る。

「家族」として寄り添う

 いつ来ても、誰かがいて、話ができて、ごはんが食べられる。お風呂にも入れる。そんな「暮らしの基盤」をしくみとして持つことで、支援者ではなく「家族」として寄り添える。今回のおばあちゃんチームもその延長線上にある取り組みだ。

社会には、家族として関わる場やしくみが、これからもっともっと必要になってくるのではないだろうか。

全国各地で、産後ケア事業やボランティアによる訪問支援、地域の居場所づくりなど、子育てを孤立させない取り組みが広がっている。ただ、その多くは制度や支援の枠組みの中にあり、じじっかのように、血縁を越えて自然に「家族」として関わる形はほとんど見られない。

頼れる誰かがいる安心

本来、子育ては家庭だけで抱えるものではなく、社会全体で支えるものだ。しかし日本では、子育ての責任が母親や家庭に強く委ねられ、周囲の目を気にしながら日々を送る母親も少なくない。

じじっかの「おばあちゃんチーム」は、赤ちゃんをお風呂に入れるという実務的な支援にとどまらず、実家がいくつも近くにあるかのような、「頼れる誰かが、いつもそばにいる安心感」を育んでいる。その存在は、これから先、どれほど心強い支えとなるだろうか。

「地域の乳母チームづくり」が、子育てを社会にひらく一つの選択肢として、各地に根づいていくことを願わずにはいられない。

じじっかとは?

福岡県久留米市にある、一般社団法人umau.(ウマウ)が運営する、ひとり親世帯等を応援する居場所。2014年、母子家庭のお母さん3人からスタート。目標は2つ。貧困の根本原因を追究・解消する「100人の貧困世帯の脱出」と、地域子育てを実現する「ひとり親ふたり親ではなく7人親へ」。親子食堂や居場所づくりを通じて、子育てや暮らしをシェアし、さまざまな家庭の実家として大きな役割を担っている。

一般社団法人umau. 実家よりも実家ーじじっかー
久留米市梅満町32-4-2F(久留米食糧エルピー電化内)
0942-48-0908 umau.kurume@gmail.com  https://umau-llc.localinfo.jp/

お母さん業界新聞2026年1月号

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